松本さんが長年愛用する「1991年製ゴールド・トップ#1-5283 」(以下「91GT」)と全く同じモデルは近年では入手困難かつ価格高騰していることもあり「せめて同時期のレスポールを」と検討されている方もいらっしゃると思います。
今回は91GTと同時期のレスポールについて主に当時のカタログモデルについて簡潔にではありますがまとめていきます。
ここで紹介するのは1991年~1993年に販売されていた近年「プリ・ヒストリック」と呼ばれているリイシューやその派生モデルのみとしています。余談ですが私自身は今回紹介する全てのカタログモデルおよびいくつかの特別オーダーモデルの所有経験があり、現在は91GTのみを手元に残しています。
ちなみに91GTは"Les Paul Reissue Gold Top"が正式名称で、"Custom Shop Edition"として販売された「カタログ外モデル」です。当時の広告を載せておきます。
写真:リットーミュージック『ギター・マガジン』1992年11月号内広告
松本さんの91GTの各部詳細については別記事にまとめていますのでそちらを参照してください。

'59 Flametop Reissue
写真:ギブソン『ギターカタログ』1992年版 P.4
当時のリイシューのフラッグシップ・モデルで定価は63万円でした。ボディ材が「(基本的に)杢目のソフトメイプル・トップであること以外は」細かいパーツに至るまで91GTと同じ仕様です。
ただボディ・トップ材の影響なのか、個人的な印象としてはサウンドはあまり91GTには似ていないと感じています(イメージとしては初代CYとTak Burst、あるいは初代TAK DCとFlame Top (Cherry)のTAK DCの違いのような感じと思っていただければ)。
ちなみに"60 Flametop Reissue"も後に販売されていて、こちらは後述のレスポール・クラシックと同じ「薄く・細い」ネック形状が特徴です。
さまざまな特別オーダーモデルが存在
上述の2モデルは当時さまざまな特別モデルが販売されていて、かつて松本さんも所有していたジミー・ウォレス・モデル(下の広告の黄色枠囲みの個体) 、21本限定の1992年製ノーマン・ハリス・モデル、20本限定の1993年製山野楽器オーダーモデルなどが存在します。
写真:リットーミュージック『ギター・マガジン』1992年6月号内広告
※1992年製ノーマン・ハリス・モデル
写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』1998年3月号 P.189
Reissue Gold Top (P-100 P.U.)
写真:Gibson『ギターカタログ』1992年版 P.5
カタログラインのゴールド・トップでピックアップは"P-100"が搭載されていて、定価は35万円でした。
こちらはピックアップ以外はネック形状も含めて91GTと同じ仕様ですのでハムバッカーに改造すれば91GTと同仕様になります(91GTはこのモデルをベースにハムバッカー仕様に変更した「カタログ外モデル」)。
※上のカタログ写真ではペグがナットで締めるタイプになっていて1990年までのリイシューの仕様ですが(通常はヴィンテージ同様のブッシュタイプ)、1991年前半にはまだこの仕様のリイシューが存在するのが複数確認されていて混在しているようです(海外のオークションでは時々出品されています)。
Les Paul Classic
写真:Gibson『ギターカタログ』1992年版 P.5
後のクラシックと違ってヘッドに"Les Paul MODEL"表記が施された当時定価25.8万円のレギュラーラインですが、木部の仕様は「ネック形状以外は」91GTと全く同じです。
レスポール・クラシックはネック形状がかなり「薄く・細い」ため好みがわかれるところですが、個人的には一般に流通しているレスポールとしては外観・サウンド共に最も「91GTっぽさ」を感じられるモデルだと思っています(ピックアップは57クラシックなりバーストバッカーなりお好みのものに載せ替えるのも良いかと思います)。
ちなみに1992年頃から販売される「レスポール・クラシック・プラス」はレスポール・クラシックのボディ材を杢目のメイプル・トップに変更したモデルです。
⇒2023/02/18更新
本記事の趣旨から逸れますが、ヘッドに"Les Paul CLASSIC"表記が施されたクラシックはネック形状が若干変更されていて、ローポジション(ナット~3F付近)が一回り太くなっています(ハイポジションは"Les Paul MODEL"表記のクラシックとほぼ同じネック形状)。また、それ以外にも明確に仕様変更されている箇所が多々見受けられます。
⇒2023/03/06更新
近年、1990年代製のレスポール・クラシックを「ヒスコレに匹敵するとの話もある」との商品説明がショップ・個人出品共に目につきますが、そもそも目指した方向性が全く違いますので、そのような営業トーク(文面が酷似しているケースが大半なので、レスポール・クラシックの歴史を都合よく拡大解釈したものがコピペされて広まっているようです)に惑わされることなくご自身の感性のままにお好みで選んでいただくと良いかと思います。
57クラシック標準搭載の"Custom Shop Edition"も存在
写真:リットーミュージック『ギター・マガジン』1992年5月号内広告
こちらのレスポール・クラシックはピックアップが57クラシックでプレーンのトラスロッドカバーとピックガード、そしてヘッド裏には"Custom Shop Edition"のデカールが入っています。
そのためボディをゴールド・トップにリフィニッシュすれば(ネック形状以外は)91GTとほとんど同じモデルになります(近年人気のモデルですので即売れですが…)。
ちなみにこの限定モデルと91GTに搭載されているアッセンブリーユニットのポットデイトはほぼ同時期であることやシリアルナンバーが91GTと100番程度の違いとなっていることからも製造時期が近いようで、そのためなのかサウンドの傾向も近いと感じました(普段リペア・カスタマイズをお願いしているリペアマンさんと一緒に91GTと弾き比べをした際にも同様の感想をいただきました)。
おわりに
以上簡潔にではありますがまとめてみました。リイシューとしての再現度という観点ではヒストリック・コレクションに大きく譲りますが、個人的には当時の音楽シーンにマッチしたサウンドと演奏性を兼ね備えた素晴らしいモデルだと思います。
特にネック形状はテクニカルな演奏にも対応しやすく、1993年~1994年頃の松本さんが91GTでテクニカルなフレーズを連発していたのも納得です。
ただし、サウンド・演奏性双方に影響のあるネック仕込み角のばらつきが大きいため、検討に際しては複数の同モデルを試奏する機会を設けることをおすすめします。