2021年5月10日発売の『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』(以下「ギターブック」)で新たに判明した内容を含めて更新しました。
今回は松本さんが所有するフェンダー製ヴィンテージ・ギターについてまとめていきます。
各モデルの詳細な仕様や歴史についてはさまざまな書籍やサイトで語られていますので省略しています。
目次
1954 Stratocaster #1090
写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』1997年7月号 P.184
松本さんが初めて手にしたヴィンテージ・ギターで、購入は1991年です。所属事務所の方がニューヨークで見つけたもので、15000ドル(当時のレートで約200万円!)だったと当時の専門誌で語っています。
このギターが手元にきた日の夜は「ギター・スタンドに立てて、それ見ながらお酒とか飲んでさ、(中略)その夜スタンドごと枕元に立てて寝たの。(中略)それくらい嬉しくてね(出典:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』1992年1月号 P.138)」とのことで、ここから松本さんはヴィンテージ・ギターの魅力にハマっていくことになります。
シリアルナンバーは#1090で、ミュージックステーションのテーマ曲「#1090 ~Thousand Dreams~」のタイトルにもなっています。
また「あのギターで『Wanna Go Home』って曲はできた様なものだからね。ギターが作らせてくれた曲(出典:シンコーミュージック『GiGS』1998年3月号 P.6)」と語るほど松本さんの作風にも影響を与えたギターでもあります。
購入当初はストラップピンも交換されておらずステージでもオリジナル状態で使用していて、後にストラップピンのみ交換とされていましたが、近年の専門誌で実用性を考慮して一部パーツが交換されていると記載されていました(どのパーツかは確認できていません)。
このギターについて松本さんは「凄くいいギター。でもちゃんと弾かないとちゃんと音が出ない(出典:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』1999年1月号 P.48)」と語っており、このギターでしか出し得ない魅力的なサウンドがあることを現在でもレコーディングで使用されていることが物語っています。
1966 Stratocaster #135582
写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』1997年7月号 P.185
松本さんが1993年末にアメリカのロサンゼルスで購入したもので、2本目のヴィンテージ・ストラトとなります。
入手時点でボディは日本製、ピックアップが"Fender: Texas Special"、ペグはシャーラー製に交換されていて、実はオリジナルはネックだけだったとのことです。
ラージ・ヘッドが特徴のこのギターについて、松本さんはサウンドに加えてネック・グリップを特に気に入っていて、1990年代はレコーディングだけでなくツアーでも使用され、2000年代に入ってからも度々レコーディングで使用されてきました。
このギターも多くの他のヴィンテージ・ギターと同様に背の高いフレットに打ち直されています。
また、ボディは元々ホワイトだったものをブラックにリフィニッシュしたもので、ホワイト時代は「B’z LIVE-GYM ’94 “The 9th Blues”」のツアーポスターで見ることができます。
写真:1994年発行 八曜社『B’z LIVE-GYM ’94 “The 9th Blues” MAIL ORDER LIST #002』
下の写真のようにこのポスターの現物をよく見ると当初はホワイト・ピックガードでビス穴位置から1966年製ストラトにオリジナルで装着されているタイプだったことがわかります(現在装着されているミントグリーンのピックガードはビス穴位置が1962年以前のタイプ)。
写真:1994年 八曜社『B’z LIVE-GYM ’94 “The 9th Blues” ツアーポスター』
ちなみにギターブックの写真からペグはシャーラー製からクルーソン・タイプに交換されていて、交換時期は2005年以前であることが当時の専門誌(下の写真参照)からわかります。
写真:『サウンド・デザイナー』2005年5月号 P.10
1962 Stratocaster #75457
写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』1997年7月号 P.185
1993年末に入手したこのギターは当時のTV出演の際にも使用されていたフィエスタ・レッドが印象的な1本で、松本さんはこのフィエスタ・レッドに拘って探したそうです。
このギターについて松本さんは「最も完成度の高いストラト(出典:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』1999年1月号 P.48)」と語っており、1990年代には通常使用に加えてナッシュビル・チューニング用としても使用され、近年再びレコーディングを支えています。
スペック的には指板が「スラブボード」であることから1962年前半に製作されたものであり、カスタムカラー仕様も相まってヴィンテージ・ストラトとして人気・価値が高いとされています。
このギターもストラップピンが交換されていますが、それ以外はオリジナル状態で使用しているようです。
Stratocaster (1966 Body, 1974 Neck) #169073
写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』1997年7月号 P.185
「B’z LIVE-GYM ’94 “The 9th Blues” ~Part 1~」でジミ・ヘンドリックスの「Little Wing」をカバーする際にブラック・ボディにリバース・ヘッドのストラトが欲しかったため2本のギターを使って組み上げたギターで、ボディは1966年製、ネックは1974年製の左利き用のもので、ボディのブラック・カラーはリフィニッシュされたものです。
余談ですがこのギターのボディと前述の1966年製ストラト (#135582)のボディを見比べるとコンター加工の違いから"#135582"のボディはオリジナルではないことがよくわかると思います。ピックガードが交換(恐らく新たに製作されたもの)されていて、リア・ピックアップがオリジナルとは逆向きに傾いていて、左利き用のギターを右利きで使用した場合と同様のサウンドを目指したギターであることがわかります。
松本さんはこのギターのサウンドについて「音はどうなんでしょう…(出典:プレイヤー・コーポレーション『Player』1997年7月号 P.186)」と語っていることからあまり良い印象は持っていないようで、またネック・グリップが好みではなかったことから「B’z LIVE-GYM ’94 “The 9th Blues” ~Part 2~」では1991年製ゴールド・トップ#1-5283 で「Little Wing」を演奏しており、以降使用されないまま現在に至っています。
⇒2020/04/30更新
公式YouTubeチャンネルで2020年4月27日に公開された「HOME」を見ると、現在は松本さんの自宅に置かれているようです。
Stratocaster (1974 Body, 1966 Neck)
写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』1997年7月号 P.185
ボディは1974年製の左利き用、ネックは1966年製のもので、前述のギターの所謂「余りもの」です。
ハイ・ポジションの演奏性、ピックアップ・セレクターの位置関係などの影響で弾きづらいため、ほとんど使用されたことはないようです。このギターのボディもリフィニッシュによるホワイトで、前述のブラックのものとの対比となっています。
また、ヘッドには3、4弦部にテンションピンが追加されていますが、入手時点で既に追加されていたものなのか入手後に追加したものかは不明です。
1952 Telecaster #4085
写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』1997年7月号 P.184
1995年5月頃に入手した1本で、当時プリ・プロダクションでハワイに滞在していた際に偶然弾いたブロードキャスターに触発されて日本に戻ってから入手したとのことです。
B'zのアルバム『LOOSE』『SURVIVE』では比較的使用頻度が高く、ストラトと同等かそれ以上に使われていた印象があります。
このギターもリフレットが施されていますが、それ以外はオリジナル状態で使用しているようです。
おわりに
今回はフェンダー製ヴィンテージ・ギターについてまとめました。ストラト、テレキャスのヴィンテージは1990年代に入手以降は増えていないようで、近年は1969リイシューまたはサドウスキー製ストラトタイプ といった現代のギターと併用している印象があります。
また、一部のギターは2018年開催の「B'z 30th Year Exhibition "SCENES" 1988-2018」でも展示されましたが、1966年製ストラト (#135582)がヴィンテージ・コーナーではなくMG-MIIG 2号機 の隣に展示されていて、このギターに関しては松本さんの中では現代のものという認識なのだろうなと感じました。