【B’z機材】Tak松本ギターコレクション~ヴィンテージ・ギブソン編~

2021年5月10日発売の『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』(以下「ギターブック」)で新たに判明した内容を含めて更新しました。

今回は松本さんが所有するギブソン製ヴィンテージ・ギターについてまとめていきます。
各モデルの詳細な仕様や歴史についてはさまざまな書籍やサイトで語られていますので省略しています。

2020年発表の松本さんのソロアルバム『Bluesman』や配信ライブ「B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day1~5」で再登場した「清正」は下記記事にまとめています。

【B’z機材】70年代レスポール・カスタム ‐清正‐を徹底解剖

⇒2022/07/20更新
2022年7月15日に公式発表された最新シグネチャー・モデル『Gibson Tak Matsumoto 1955 Les Paul Goldtop』を記念して、ベースとなった1955年製ゴールドトップの特集記事を作成しました。
【B’z機材】バーブリッジ・レスポール総ざらい~55GT編~

Gibson 1959 Les Paul Standard #9-1156

写真:シンコーミュージック『GiGS』2018年1月号 P.149

松本さんが初めて手にしたヴィンテージ・レスポールで、購入は1993年です。

親交のある楽器店の方が海外で見つけたもので、写真確認のみで購入を決めたそうです。

その際に他に2本ほど候補があって、そのうちの1本はボディ・トップの赤が退色していないデッドストックだったそうで「ホント、あの時両方買っていたらな…(笑)(出典:プレイヤー・コーポレーション『ザ・ギブソン・レスポール・スタンダード 1958-1960』P.145)」と後に語っています(デッドストックの方が安かったそうです!)。

入手後しばらくはレコーディング、TV出演、ソロ・プロジェクト「ROCK'N ROLL STANDARD CLUB BAND」ツアー等で使用されていました。

その後シグネチャー・モデルを手にしてからは出番がなくなり「いい音がしない」状態になっていた時期もあったようですが、リイシューモデル"TAK MATSUMOTO 1959 Les Paul"発表を機に近年再びレコーディングで多用されています。

この貴重なヴィンテージ・レスポールも実用性の観点からストラップピン、ペグ (90年代のクルーソン)、ブリッジ (リテイナー有り)、フレット、ナット、ジャックプレート (樹脂製→金属製)が交換されています。ちなみにジャックプレートはギブソン純正ではなく国産品です(厚みが違います)。

Gibson 1956 Les Paul Gold Top #615315

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2017年3月号 P.24

「B’z LIVE-GYM Pleasure ’97 “FIREBALL”」ツアー中に入手した1本で、入手後すぐにステージで使用されました。

当時のメインギターの1991年製ゴールド・トップ#1-5283 が大がかりなメンテナンスのため長期離脱した時期を支えたギターで、B'zのアルバム『SURVIVE』ではメインギターとして、ツアーでも半音下げチューニング用のメインギターとして使用されました。

その後シグネチャー・モデル期には使用されていませんでしたが、ソロツアー「Tak Matsumoto Tour 2016 -The Voyage-」以降度々使用されています。"P-90"ピックアップが搭載されているため、高音域の抜けの良いサウンドが特徴的で、わかりやすいところでは『SURVIVE』のこれまでとは違ったギター・サウンドでしょうか。

このギターもリフレット、ペグ (90年代のクルーソン)、ナット、ブリッジ、ジャックプレート (※金属製ではありません)が交換されていますが、フレットは幅が狭く、背の高いタイプにリフレットされているのが特徴です(通常は幅が広いフレットを好んでいるようです)。

またピックガードを外していることとボディ・バックには透明の樹脂製のバックルガードが装着されていて、大きめのフェラーリのステッカーが貼られているのも特徴です。

Gibson 1958 Les Paul Standard Gold Top #8-2786

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2012年8月号 P.15

1998年末に入手した1本で、松本さんのソロアルバム『華』ではメインギターとしてほとんどの楽曲で使用されています。

ゴールド・トップにダークブラウン・バックが印象的で、1991年製ゴールド・トップ#1-5283 を気に入っていたこともあり「オリジナルの58年ってのはいつかは欲しいギターってずっと思ってたんですよ(出典:リットーミュージック『ギター・マガジン』1999年5月号 P.15)」とのことで早い時期から探していたものの「状態のいいものがなかなかなくて(出典:リットーミュージック『ギター・マガジン』1999年5月号 P.15)」と語っています。

入手当初は「ミント・コンディションの綺麗なギター」くらいの認識だったようですが、前述の『華』のレコーディングや当時のTV出演時に活躍した後、現在でもレコーディングで使用されています。

このギターもピックガードを外している他、ロックピン装着、リフレット、ペグ (90年代のクルーソン)交換、ナット交換、ペグ交換、ブリッジ交換、ジャックプレート交換 (国産品)が行われています。

その後「2020年にフロントPUの調子が悪くなり、61年製PAFに載せ替える修理を行った(出典:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.27)」とのことです。

Gibson 1957 Les Paul Gold Top #7-3956

写真:シンコーミュージック『GiGS』2018年1月号 P.150

前オーナーはThe Policeのアンディ・サマーズとされている1本で「所有している4本のヴィンテージ・レスポールの中では、今の松本さんが一番好むサウンドだと思います(出典:2003年発行 エムアールエム『music freak magazine Vol. 101』P.39)」と入手当初にギターテックが語っています。

完全にレコーディング専用機のためかロックピンすら装着されていない、松本さん所有のギターとしては極めて珍しい状態を保っています。

Gibson 1961 Les Paul Standard #15712

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2017年3月号 P.23

「B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT-」ツアー前に入手した1本で、同ツアーでも使用された他、その後のレコーディングやツアーでも使用されています。

自分と同じ生まれ年のギターが欲しいなと思って(出典:リットーミュージック『ギター・マガジン』2016年5月号 P.28)」とのことで探してもらったものですが、1961年にはモデルチェンジが行われていたため、所謂「SG」として知られているモデルを契約上の理由により「レスポール・スタンダード」として販売していたものです。

オリジナルでは「スゥイング・アウェイ・プル・サイドウェイ・ビブラート」と名付けられたビブラート・ユニットが搭載されていますが、チューニング安定性など実用性の観点からストップ・バー・テールピース仕様に変更されています。

このギターもロックピン装着の他、ペグ、ナット、ブリッジが交換されています。

ブリッジはこのギターを手配した楽器店取り扱いの国産ABR-1タイプに交換されていて、現在販売されている仕様とは違ってサドルがメッキされていないタイプです。現行品は1959年製レスポール#9-0308 の写真を参照してください。

写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.36

余談ですが、オリジナル状態はこのギターを手配した楽器店のSNS上で現在も見ることができます(50周年記念フライングVも一緒に写っています)。

Gibson 1955 Les Paul Gold Top #5-9937

写真:リットーミュージック『ギター・マガジン』2020年9月号 P.192

2019年に購入した3本のヴィンテージ・レスポールの中で最初に見つかったのがこのバーブリッジ仕様のレスポールとのことです。

2019年発表のB'zのアルバム『NEW LOVE』や「B’z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE-」でも大活躍したジェフ・ベックが愛用していた「オックスブラッドにリフィニッシュし、ハムバッカー仕様に改造されたバーブリッジ仕様のレスポールを再現したモデル」を気に入ったことがきっかけで「自分でも同じことをやってみよう(出典:リットーミュージック『ギター・マガジン』2020年9月号 P.190)」と思い購入したとのこと。

カスタマイズを担当された楽器店の方から譲り受けたヴィンテージの"P.A.F."は1960年製のES-175に搭載されていたものでジェフ・ベックの愛機と同様にリアピックアップはバーブリッジ寄りの配置が再現されています(ピックガードの隙間は敢えて再現していないようです)。松本さんが使用し始めたのを機にバーブリッジ仕様のレスポールが増産され、中古市場でも過去のモデルを含めて即売れの状況が続いていますが一般的なリイシュー・レスポールと同様のリアピックアップ位置のモデルも多く、松本さんと同じ仕様のものを入手するとなると「通常の1954モデルを購入してリアピックアップ位置のザグりを修正する」のも選択肢に入ってくると思います。

譲り受けたP.A.F.は「クリーンよりも歪みがいい感じなんですよ(出典:リットーミュージック『ギター・マガジン』2020年9月号 P.190)」とのことで2020年発表の松本さんのソロアルバム『Bluesman』でもディストーション・サウンドのメイン機として全13曲中8曲で使用された他、配信ライブ「B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day1~5」でもDay2の「The Wild Wind」で使用されました。

元々オールゴールドだった塗装は入手時点でネック裏が剥がれていて且つ全体的にくたびれた状態だったためカスタマイズに際してオール・リフィニッシュされていて、ネック裏のみ敢えて入手時を再現しているとのことです。モディファイ途中のくたびれた状態の写真もこのギターをカスタマイズした楽器店のホームページやSNSとは別のところに存在していますが、そちらには松本さんの名前が出ていないため直リンクは控えさせていただきますので興味のある方は探してみてください。

その他リフレットやそれに伴うナット交換 (オリジナルと同様にデルリンを採用)、シャーラー製ロックピンや金属製ジャックプレートへの交換など徹底的にカスタマイズされており、これまでと同様にヴィンテージ・レスポールといえど実践投入にあたって演奏性・機能性を重視しているのがわかります。

⇒2022/07/20更新
2022年7月15日に公式発表された最新シグネチャー・モデル『Gibson Tak Matsumoto 1955 Les Paul Goldtop』を記念して、ベースとなったこの1955年製ゴールドトップの特集記事を作成しました。
【B’z機材】バーブリッジ・レスポール総ざらい~55GT編~

Gibson 1954 Les Paul Gold Top #4-0673

写真:リットーミュージック『ギター・マガジン』2020年9月号 P.192

前述の1955年製ゴールド・トップのオリジナル状態とも言える一本で「P-90」ピックアップを搭載しているのが特徴です。

こちらは65年以上前のギターとは思えないほど状態が良くほとんど傷も見当たらないなど「ミントコンディション」の名にふさわしく、よくこの状態で保管されていたなと思わせる一本です。実は2020年夏頃まで某楽器検索サイトで松本さんの手元に渡る前の詳細写真を見ることができましたが現在は削除されています。

初登場は公式YouTubeチャンネルで2020年4月27日に公開された「HOME」で、この少し前にファンクラブ会報で1955年製ゴールド・トップの写真と松本さんのコメントが載っていたこともあり、同時期に2本購入されていたとは思わず動画を観て混乱された方が多かったようです(YouTube動画とファンクラブ会報の写真を見比べるとポジションマークの模様の違いやボディ・トップのピックガード用ビス穴位置の違い、トラスロッドカバー位置の違いなどから別物であることがわかるので気付いていた方もいたようです)。

こちらは外観上はシャーラー製ロックピンや金属製ジャックプレートへの交換くらいと最小限のカスタマイズに留められていてほぼオリジナル状態で使用されることになり『Bluesman』では全13曲中5曲で使用された他、配信ライブ「B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day1~5」でもDay4の「いつかまたここで」で使用されました。

⇒2022/07/22更新
確認できた範囲ではヴィンテージ・バーブリッジ・レスポールの大半はリアピックアップがブリッジ寄りの配置のようです(下の写真参照)。

54年製と56年製

写真 (54年製):2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.20
写真 (56年製):同掲著 P.24

Gibson 1959 Les Paul Standard #9-0308

写真:リットーミュージック『ギター・マガジン』2020年9月号 P.192

2019年11月に入手した1本で、松本さんがギブソン社を訪問した際に紹介してもらったヴィンテージ・ギター・ショップで購入したとのことで、現在もYouTubeにはこのギター・ショップのチャンネルに紹介動画が残っています。

1990年代から所有している1本目のレモンドロップのレスポールと比較してオリジナルのチェリーレッドがかなり残っているのが特徴で目立つ傷も見当たらないなど外観も含めて松本さんの嗜好にマッチした個体だったことが想像できます。

今回のチェリーレッドはわりとクリーン系に合う気がします(出典:リットーミュージック『ギター・マガジン』2020年9月号 P.190)」とのことで『Bluesman』では全13曲中4曲で使用された他、配信ライブ「B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day1~5」でもDay5の「Classmate」「マジェスティック」のクリーントーンがメインの2曲で使用されました。

松本さん自身はソロアルバム発売時の生配信「Tak Matsumoto “Bluesman” YouTube Live」でフルオリジナルで使用しているような発言をされていますが、実際にはペグが交換されている他、ブリッジを「ワイヤーありのABR-1」に交換、金属製ジャックプレートへの交換などカスタマイズされているのがわかります(松本さん使用機のブリッジは基本的には「ワイヤーありのABR-1」が搭載されていて、弦が切れた場合でもサドルが紛失しないようにとの配慮ではないかと推察されます)。

ちなみにオリジナルは「ワイヤーなしのABR-1」が正しくて、某専門誌に記載されていた「サドルを押さえる針金を備えたものは1955年から'62年までの仕様だ」は誤りです。興味のある方はヴィンテージ・レスポールに関する書籍やネット上で確認できる実機写真、パーツを収集されている方のブログ記事、レプリカ・パーツを製作・販売しているサイトなどをチェックしてみてください。

また、ブリッジは形状からギブソン純正品ではなく、カスタマイズを担当された楽器店取り扱いの国産ABR-1タイプに換装されています。ギブソン純正品と比較するとブリッジの横幅やオクターブ調整用スクリューの形状などが違うのがわかると思います(写真下側がギブソン純正品)。

写真上:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.23
写真下:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.29

Gibson 1958 Flying V #8-2901

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2013年12月号 P.94

「B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day1~5」のDay5の1曲目でついに表舞台に姿を現したコリーナのヴィンテージ・フライングVです。

当時わずか98本のみの製作ということで恐らく現在日本にも数本しか存在しないと推察されるため、またボディ・トップの特徴的な木目からヴィンテージ・ギターに興味をお持ちの方の中にはすぐに気付いた方もいらっしゃると思います。

余談ですが、ギターブックに掲載のコンパクトエフェクターの中に1990年代にメインで使用していたロックマン製品のリバイバル品があることが話題になりましたが、このヴィンテージ・フライングVを所有していた楽器店企画の製品ですのでその繋がりで頂いたものと考えるのが自然だと思います。この件をツイートしたところリバイバル製品の公式アカウントにリツイートされました(笑)。まぁ、そういうことです。

実はこのフライングVは映像作品収録の「HONOTORI」のレコーディング・シーンでも登場していてコリーナのフライングVが2本あることに気付いていた方も多いようですが、当時は未公表のためか唐突に現れたペットボトルに阻まれて詳細確認できないようになっています(笑)。ただ、ヘッドに付いている特徴的なキズなどから上記出典に掲載の詳細写真で判別できるのも事実ですね!(私もすぐに気付いたわけではなく、特定するのにしばらくかかりました…)

写真左:2019年 VERMILLION RECORDS『B’z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI-』Disc2 9分14秒
写真右:2019年 VERMILLION RECORDS『B’z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI-』Disc2 9分23秒

このフライングVもブリッジが松本さんが所有するほとんどのヴィンテージ・ギターを手配された楽器店取り扱いの国産ABR-1タイプに交換されていて、松本さんが近年入手したヴィンテージ・ギブソンのほとんどの個体がこのブリッジに交換されています。

写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.84

本家コリーナVはボディが厚く、重め!

ちなみに本家ギブソンのコリーナ・フライングVは近年人気となっている国産のコリーナVタイプと比較してボディが厚く、松本さんが所有する本機のボディ厚は「約38ミリ(1-1/2インチ)(出典:プレイヤー・コーポレーション『Player』2013年12月号 P.93)」で、重量も「約3.85kg(出典:プレイヤー・コーポレーション『Player』2013年12月号 P.93)」とのことで比較的軽量なレスポールと同程度で、近年松本さんが好んで多用している50周年記念コリーナVよりもかなり重いと言えると思います。

おわりに

今回はギブソン製ヴィンテージ・ギターについてまとめました。これ以外に近年のアーティスト写真で使用されている1968年製と思われる黒のレスポール・カスタムなどがありますが省略しました。

一部のギターは2018年開催の「B'z 30th Year Exhibition "SCENES" 1988-2018」でも展示されましたが、ウェザー・クラックなど年数相応の傷はあるものの、どれもヴィンテージとしては非常に綺麗な状態を保っているのが印象的で、外観も含めて良い状態のものを探すという松本さんの拘りが見て取れました。