【B’z機材】1991年製ゴールド・トップを徹底解剖

2021年5月10日発売の『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』(以下「ギターブック」)で新たに判明した内容を含めて更新しました。

今回は松本さんが長年愛用する1991年製のレスポール・ゴールド・トップ #1-5283(以下「91GT #1-5283」)を最新状態にフォーカスしながら細部まで見ていきたいと思います。なお普段専門誌で語られることのない内容に関しては私が所有する同仕様の1991年製ゴールド・トップ の写真やデータを載せています。

また、記事の都合上最新の写真ではないものもありますが現在の仕様と同一のものを掲載していますのでご了承ください。

これまでの専門誌、ライブ映像、そして2018年開催の「B'z 30th Year Exhibition "SCENES" 1988-2018」(以下「エキシビション」)の会場で肉眼で確認できた内容をまとめていますが、一部に個人的推測もありますので誤報もあると思いますがご容赦ください。

時系列でまとめたモディファイの変遷は別記事にまとめていますのでそちらを参照してください。

【B’z機材】1991年製ゴールド・トップ:モディファイの変遷

あらまし

写真左:シンコーミュージック『GiGS』1993年1月号 P.15
写真右:リットーミュージック『ギター・マガジン』2019年11月号 P.246

初お目見えは「B'z LIVE-GYM Pleasure '92 "TIME"」で、その後「B'z LIVE-GYM Pleasure '97 "FIREBALL"」(以下「FIREBALLツアー」)までレコーディング・ツアー共にメインギターとして大活躍し、ツアー後に大がかりなメンテナンスが施されています。

1999年中盤以降はシグネチャー・モデルにシフトしていったため表舞台からは遠ざかっていましたが「B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 -GLORY DAYS-」で久しぶりに使用されたのを機に徐々に出番が増えていき、2020年の配信ライブ「B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day1~5」ではメイン機として最多使用(16曲)されており、今なお松本さんから絶大な信頼を寄せられているギターです。

当時の広告によると定価41.2万円ですので実売価格は30万円台と推察され、現在も同等もしくはそれ以上の価格で取引きされていますので松本さんが使用したことによる人気の程が窺えます。ちなみに正式名称は"Les Paul Reissue Gold Top"で、当時の専門誌でよく使われていた"Les Paul Standard"はギブソン製品カタログでは全く別物のレギュラー品のことを指します。

写真:リットーミュージック『ギター・マガジン』1992年11月号内広告

ボディ材&カラーリング

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2019年7月号 P.25
写真右上:シンコーミュージック『GiGS』1995年3月号 P.21

1992年の入手以降FIREBALLツアーまではオリジナルのゴールド・カラーでしたが、ツアー後に大掛かりなメンテナンスが行われた際に当時リペア・カスタマイズを担当していた職人さんの手でリフィニッシュされています。

オリジナルのゴールドと比較してやや赤みを帯びていて見る角度・照明の当たり具合によってより表情豊かな色合いを見せるようになりました。

リフィニッシュ時にボディ・トップのピックガード用ビス穴が埋められていますが、上の写真や近年の映像作品でもわかるように年々「塗装ひけ」が進んでいるためか現在は埋めた跡がやや目立つようになっています。

また、近年再びステージでのメイン機として使用頻度が上がっているためボディ・トップの傷が増えてきているのが映像作品でも確認できます。

ボディ材は2ピースのハードメイプル・トップ、1ピースのマホガニー・バックです。ちなみに1991年~1993年のカタログラインの"59 Flame Top Reissue"は基本的にソフトメイプル・トップで、ハードメイプル・トップでハムバッカー仕様のリイシュー・レスポールはこのゴールド・トップのみですあくまでも「1991年~1993年当時のリイシューでは…」ですので誤解なきよう。ヒスコレなどその他のモデルは除外)

ブリッジ&テールピース

写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.198

ブリッジ (ABR-1)は1990年代はゴトー製のABR-1タイプに換装されていましたが、2008年の再登場以降は現行のギブソン純正品 (ワイヤーありのABR-1)に戻されていていて、ブリッジポストはゴトー製のミリサイズのものを流用しているためブリッジ本体の穴を広げて使用しています(ギブソンのポストは細めのインチサイズなのでそのままでは入らないです)。

テールピースはリフィニッシュ時に"GOTOH: GE101Z" (亜鉛ダイキャスト)に換装されて以降そのまま使用されています(スタッドはオリジナルのギブソン純正品)。

ノブ&ポインター

写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.198

ノブはオリジナルのエンボス文字タイプのアンバー色のもので、ギターブックの写真からリア・トーン以外は交換されているようで(見分け方はノブ中央のギザギザの形状です)、フロント・ボリュームとリア・ボリュームは共に滑り止めの樹脂が巻かれています。

また、ポインターも1994年時点で全て取り外されていて現在に至ります。

ちなみにポインターを外すきっかけは当時のポインターは先端が鋭利でうっかり指をひっかけるとケガをするため前述の職人さんから提案されたことによるもので、この仕様は初期のシグネチャー・モデルにも引き継がれました(近年はシグネチャー・モデルもポインターあり)。

ピックアップ&エスカッション&ビス

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2019年7月号 P.25

ピックアップはオリジナルは"57 Classic" (ニッケルカバー)で、その後何度か換装されていて2002年頃に現在のリバースゼブラのものに換装されているのがファンクラブ会報で確認できます。

品番に関しては専門誌でも「ピックアップはオープン・タイプの57クラシックを搭載出典:プレイヤー・コーポレーション『Player』2019年7月号 P.25)」「現在のピックアップはTAKバーストバッカー (アルニコ5)を搭載(出典:リットーミュージック『ギター・マガジン』2016年5月号 P.31)」のように記載が統一されていません(ギターブックの記載はギター・マガジン誌を踏襲しています)。

個人的には同時期に「Tak Matsumoto Les Paul Canary Yellow (以下『初代CY』) 」の"TM 002が"Burstbucker New Tak Matsumoto Special"に換装されていることがギターテックから語られていますので91GT #1-5283も同様の換装がされていると考えるのが自然ではないかと思っています(当時は複数のギターを一斉に同一品番のピックアップに換装することが何度かありましたし、わざわざ91GT #1-5283だけを非売品のリバースゼブラの57クラシックに換装するとは思えないのですが真相は如何に…)

エスカッションはショートタイプが使われていて当時のリイシューの仕様です。1990年代後半に見られたリアの歪みが無くなっていますので交換されているようです(レスポールはアーチトップですがエスカッションはフラットなタイプを曲げて使用しているので経年変化で割れたり歪みが出たりします)。

エスカッション固定ビスはオリジナルはニッケルメッキのラウンド・トップのものですが、1995年頃からヒストリック・コレクション(以下「ヒスコレ」)と同様の黒メッキの細くて長いタイプに交換されています。

これについては恐らく錆びてしまって機能性が低下したため汎用的で入手しやすいタイプを使用したのではないかと思います。というのもオリジナルの太くて短いタイプはレギュラーのレスポールなどに使用されているのみでアフターマーケットでは販売されていないです。

参考までに私が所有する同仕様の1991年製ゴールド・トップのオリジナル・ビスと松本さんが95年以降に使用しているビスと同等品の写真を載せておきます。

※筆者所有品

ピックアップ間距離

写真左:シンコーミュージック『GiGS』1999年8月号 P.65
写真右:シンコーミュージック『GiGS』1999年6月号内ポスター

上の写真はフロント・リアのPU間距離を初代CY (パーツ配置は当時のヒスコレ準拠)と比較したもので、この写真からわかるように91GT #1-5283の方がピックアップ間距離が長いです。

これがややタイトな鳴りで高域寄りなサウンドを生み出す要因のひとつになっています(あくまでも市販品の初代CYとの比較です。ヒスコレの仕様は時期によって違い、リアPU位置は複数回仕様変更されていますので悪しからず。個人的にはネック仕込み角の違いによる所謂テンション感の影響もかなり大きいと感じています)。

参考までに最近使用頻度が高いオックスブラッドのレスポールは91GT #1-5283よりもさらにブリッジ寄りです(下の写真参照)。

写真左:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』2019年11月号 P.179
写真右:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』2019年11月号 P.180

トグルスイッチ&プレート

写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.198

プレートは現在もオリジナルが使われていて、フル稼働だった1990年代後半時点で"RHYTHM"と"TREBLE"の文字がほとんど消えていてひび割れも発生しています。

トグルスイッチは1994年頃に国産品に交換されていてノブも1997年頃からはクリーム色でしたが、現在はオリジナルと同様にスイッチクラフト製、ノブもアンバー色に戻されています。

トグルナットは近年物の汎用タイプが使われていて、現行のヒスコレに採用されているヴィンテージ・レプリカではありません。

ジャックプレート (※筆者所有機写真)

ジャックプレートは1990年代後半のリフィニッシュを含むメンテナンス時にオリジナルのギブソン純正の樹脂製 (クリーム色)からギブソン純正の金属製 (ニッケルメッキ)に交換されています。この仕様はCYを除く歴代シグネチャー・モデルにも引き継がれています。

アッセンブリー (※筆者所有機写真)

(写真はオリジナル状態)

当時のリイシューはレギュラー製品と同様に金属プレート上にポットと配線 (4芯)が組まれていますが、91GT #1-5283はプレートを外して配線材、コンデンサー、ポットなど総交換されています私も所有する同仕様の1991年製ゴールド・トップ を前述の職人さんに松本さん仕様にモディファイしていただいた際に教えていただきました)。

また、ヒスコレと比較してコントロールキャビティからトグルスイッチまでのルーティングが大きく、当時のリイシューの仕様です。

余談ですがルーティングが大きいとややソリッド感に欠けるサウンドになる傾向があるのでヒスコレファン(ヴィンテージファン)には不評な仕様ながら初期のシグネチャー・レスポール2機種が敢えて大きめのルーティングになっているのはシグネチャー・モデル開発に際して91GT #1-5283を大いに参考にしているためと考えられます。

コントロールキャビティ内部には最初から導電塗料が塗られていて、同様にトグルスイッチキャビティにも導電塗料が塗られています。

ネックジョイント&仕込み角 (※筆者所有機写真)

所謂ナロージョイントでヒスコレのようなディープジョイントではありません。ネック仕込み角は当時のリイシューは標準で5度です。

当時のリイシューはディープジョイントではないため気にされている方も多いようですが、ここは個人的には全く気にしていなくてそもそも私の耳ではディープジョイントとの音の違いを聞き分けられないです。

ただ、ディープジョイントの方がネック仕込み角の精度が安定しているように感じていて、実際ナロージョイントでは仕込み角が6度近い個体も見たことがあります(そのためブリッジ位置が異常に高くてかなり弾きにくかったです)。

また、ディープジョイントの本来の目的は「ボディとネックを接合する際のネック仕込み角の精度安定化」というのが正しいと複数のクラフトマン・リペアマンの方から伺っています。

※ヒストリック・コレクション発表当時は殊更にディープジョイントの方がサスティーンが長く優れていると宣伝されていましたが、個人的な経験からは「一般的にギブソン・レスポールのネック仕込み角はディープジョイントが4度、ナロージョイントが5度なので前提条件が違うことからそもそもサウンドやサスティーンを比較することに難がある」と思っています。

ネック形状 (※筆者所有機写真&データ)

極普通のCシェイプで若干横幅が狭く程良い厚みを持っていて感覚的にはめちゃくちゃ薄く感じられ、ヒスコレの極太シェイプ(ネック形状の仕様変更前)とは全くの別物です。

これは当時のリイシュー (50sタイプ)共通の仕様で、前述の職人さんも松本さんの91GT #1-5283も私の所有機とだいたい同じような感じだと仰ってました。

参考までに以前所有していた1993年製1957ヒスコレとの形状比較表です。

(クリックで拡大します)

いかがでしょうか、1957ヒスコレとは随分違うのが分かると思います(ゴールド・トップ数本を含む過去に複数本所有していた当時のリイシューの計測値もほぼ同様でした)。

松本さんはネックを削って使用しているとかつてネット上では話題になっていましたが、恐らく下記のギターテックのコメントからそのような解釈が生まれたのではないでしょうか。

ネックの握りとフレットの感じを自分用に調整してあるんで。ネックは擦り合わせてあって、ちょっと薄くなっているんですよ。

出典:シンコーミュージック『GiGS』1999年6月号 P.14

このコメントからネックを削っていると広まったようですが、実際は「ネックは(リフレット時にやや特殊な手法で)指板を擦り合わせてあって」薄くなっています(実際に薄くなっているのは確定で、理由については私の検証・考察に回答いただく形で前述の職人さんに確認済ですので後日追記予定です)。

フレット

写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.198

フレットは1990年代後半のリフィニッシュを含むメンテナンス時に太めで背の高いタイプにリフレットされています。

松本さんはこのタイプのフレットが好みのようで、かつてスティーヴィー・サラスとの対談で「大きなフレットは僕も好きだな(出典:シンコーミュージック『GiGS』1992年2月号 P.52)」と語ったことがあります(厳密には個体によって違うフレットが打たれていて、その中でも91GT #1-5283には特に太めのフレットが打たれています)。

余談ですが、91GT #1-5283は正面からの写真でもサイドポジションマークが見えるくらいフロントピックアップ側に向かって指板が薄くなっているのが特徴です(この理由は私の検証・考察に回答いただく形で前述の職人さんに確認済ですので後日追記予定です)。

デカール

写真:立東社『ロッキンf 』1999年6月号 P.27

"Custom Shop Edition"のデカールは1980年代から使用されているものと同様のデザインが継続採用されていて、ヒスコレ以降のものとは違います。

当時のリイシューを複数本所有してきた経験では"Custom Shop Edition"のデカールが入ったモデルはあくまでも「カタログ外」であることを示しているだけで、材がセレクトされているとか仕上げが丁寧とかの違いは基本的には感じられません(ただし、松本さんもかつて所有していたジミー・ウォレス・モデル のように明らかに軽量になるように仕上げられているものなど例外もあります)。

ペグ

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2019年7月号 P.25
写真右上:立東社『ロッキンf 』1999年6月号 P.27

ペグは"GIBSON DELUXE"刻印入りのゴトー製で一見するとオリジナルのままですが実際は交換されていて、写真右上囲みのペグと比較すると僅かに外観の仕様が違うのがわかります。2006年開催の「B'z Treasure Land」のパンフレットでは交換されているのが確認できますので、恐らくピックアップ換装と同時期の2002年頃に行われたのではないかと思います。

ペグ配置は後のヒスコレと比較して全体的にややネック側寄りかつヘッド幅寄りに「| |」の形で配置されているのでペグボタンが出っ張っているのも当時のリイシューの特徴です。

参考までに私が所有する同仕様の1991年製ゴールド・トップのオリジナル・ペグと松本さんのゴールド・トップに現在付いているペグと同等品の写真を載せておきます。

※筆者所有品

ナット&トラスロッドカバー&突き板

写真:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』2019年11月号 P.180

ナット材はこれまで数種類使われていたのが確認されていて現在はデルリンを使用しているようです。ナットに関してはご本人の好みもあるでしょうがメンテナンスを担当されている方のその時々の見解も反映されているように思います。

トラスロッドカバーは当時のレギュラーラインに採用されているものと同様の形状ですが、現行品とは形状が違うので意外と替えの効かないパーツです。

突き板も当時のレギュラーラインと同様に透明の樹脂製が採用されていて、写真からわかるように長年の使用で弦交換の際に付いたと思われる傷が無数にあります。ちなみに"Les Paul MODEL"の文字は突き板とヘッドの間に印刷されているので磨きを入れても文字が擦れたり消えることはありません。

おわりに

今回は"91GT #1-5283"についてできる限り詳細にまとめました。改めて見ていくと長年最前線で使用する中でほぼ全てモディファイされていて、そのどれもが音・演奏性・機能性に関わる実用的なものでプロギタリストの愛機がいかに手を加えられているかわかると思います。

このことからもかつて専門誌のインタビューで度々目にした「ギターは何でも良い」というのは「音が良く演奏性・機能性に優れていて、適切なモディファイやメンテナンスが施されたギター」ということになります。

また、この仕様のリイシューは1991年~1993年とヒスコレ発売以前のわずかな期間しか生産されていないこともあり情報が少ないため現在でも詳細を掴むのが難しく、その中でもゴールド・トップはさらに少ないため91GT #1-5283に関して専門誌やネット上でも1957ヒスコレと混同した説明がされている例がありますので少しでも参考になれば幸いです。