2021年5月10日発売の『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』(以下「ギターブック」)の解説文を踏まえて更新しました。
今回は「B’z LIVE-GYM The Final Pleasure “IT'S SHOWTIME!!”」の渚園公演の演出で爆破されたレスポールについてまとめていきます。
これまでの専門誌、ライブ映像で確認できた内容をまとめていますが、一部に個人的推測もありますので誤報もあると思いますがご容赦ください。
目次
本番で爆破された2本のレスポール
写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2005年11月号 P.156
当該公演は2デイズでしたので爆破されたレスポールは2本あります。基本的には同仕様ですがコントロールノブの色に違いがあり(写真上がアンバー、下がゴールド)、映像作品を確認すると初日がアンバー、2日目がゴールドであることがわかります。
この2本のレスポールで特徴的な黒いバインディングは演出用にTak Burstから持ち替えた際に違和感が出ないようにとの配慮と推察され「白いバインディング部分は、テーピングによってブラック・カラーへと加工されている(出典:プレイヤー・コーポレーション『Player』2005年11月号 P.154)」ことから、よく見るとゴールド・ノブの個体はオリジナルのクリーム色のバインディングがところどころ確認できます。
写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.90
スタンダードでもクラシックでもないモデルとは?
当時の専門誌の記載では「Gibson Les Paul Standard(出典:リットーミュージック『ギター・マガジン』2003年11月号 P.90)」「Gibson Les Paul Classic(出典:プレイヤー・コーポレーション『Player』2005年11月号 P.156)」となっていましたが、下記特徴の全てを満たすには至っていないことからいずれのモデルとも違うことがわかります。
爆破されたレスポールの特徴
- ボディトップがフィギュアード・メイプル
- ヴィンテージを踏襲したスモールヘッドとブッシュタイプのペグ
- ナッシュビルタイプのブリッジ
- 控えめな模様のパーロイド・インレイ
- シリアルナンバーが刻印
また、ヘッドにビニールが被せてあるためブランド・ロゴが見えませんが、下の写真のようにトグルスイッチプレートのフォントやエスカッション固定ビスの形状・サイズ、そしてギターブックの写真からペグに2列の刻印(恐らく"GIBSON DELUXE")があることなどからエピフォンなどの国産モデルではないことがわかります(特にエスカッション固定ビスは同形状・サイズのものがアフターマーケットでも販売されていませんので、仮に国産モデルだったとしてもわざわざこの形状に交換する理由が見当たりません)。
写真:リットーミュージック『ギター・マガジン』2003年11月号 P.90
写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.90
爆破されたのは"60's Les Paul Standard"が有力!!
当時販売されていたレスポールの中で上記特徴を全て満たすモデルはひとつしか存在せず、2002年に販売開始された下記カタログ掲載の"60's (or 50's) Les Paul Standard"となります。ちなみに「単に"Les Paul Standard"」と表記する場合はこのモデル以前に販売されていたモデルを指し、ヘッド形状やペグなどに違いがあります。
写真左:リットーミュージック『ギター・マガジン』2003年11月号 P.90
写真右:ギブソン『ギターカタログ』2003年版 P.23
上のカタログ写真の通り、このモデルにはネック形状の違いで「太めの50's」「薄めの60's」が存在するのですが、当時の松本さんはTak Burstのような薄めのネックを好んでいたことから"60's Les Paul Standard"が有力ではないかと思います。
リハーサルではエピフォン製レスポールを爆破
写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2005年11月号 P.156
1993年のMG-MII爆破時とは違い、2003年に爆破されたレスポールはリハーサル時の個体も含めて全て松本さんの手元に残されていてリハーサルではエピフォン製レスポールを爆破したようです。
あくまでもリハーサル用ということでレスポールであること以外はカラーリングなども含めて本番で使用したモデルとは全く似ていないのが1993年のMG-MII爆破時とは大きく違う点です。
おわりに
今回は「B’z LIVE-GYM The Final Pleasure “IT'S SHOWTIME!!”」の演出で爆破されたレスポールについてまとめました。
余談ですが、この"60's (or 50's) Les Paul Standard"は「レギュラー品でありながら非常にポテンシャルの高いモデル」として現在でも人気が高く、中古市場でも即売れが続いているモデルです。
私自身もかつて所有していたことがあり、サウンド・演奏性共にB'zの楽曲を演奏するのに扱いやすいモデルと思っていて、個人的には1990年代初期のレスポール・クラシックと共におススメしています。
追記:爆破ギターがエピフォンではない根拠
⇒2023/2/10更新
本記事公開後に度々「ギターブックでは爆破されたレスポールはエピフォンと紹介されているのになぜ当ブログではギブソンと判断したのか」と問い合わせをいただいていますので追記します。
写真左:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.90
写真右:同掲著 P.91
上の写真の通り、ギブソンとエピフォンではジャックプレートの取付位置に明確な違いがあり、これはギターブック掲載のエピフォン製Tak Burst(2002年製のプロトタイプ1本と2003年製の市販品2本)とリハーサルで爆破されたレスポール全てに共通していることやジャックプレートの取付位置を変更(改造)する理由も見当たらないことから、本番で爆破されたレスポールをエピフォン製と結論付けるには難があることがわかります。
また、当ブログではこれ以上の明言は避けますが、もし爆破されたレスポールがギターブックで紹介されているモデルであるならピックアップのカラーリングやインレイ(ポジションマーク)などをわざわざそのモデルの特徴的な外観から遠ざけるようなモディファイをしていることになり辻褄が合わなくなります。
以上の点と本文中の検証結果から、改めて当ブログでの結論としては「爆破されたレスポールはギブソン製で、2002年から販売開始された"60's (or 50's) Les Paul Standard"が有力」とさせていただきます。