【B’z機材】70年代レスポール・カスタム ‐清正‐を徹底解剖

2021年5月10日発売の『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』(以下「ギターブック」)で新たに判明した内容を含めて更新しました。

今回は1998年に初登場以来約20年ぶりに表舞台に姿を現した1970年代製「Gibson Les Paul Custom‐清正‐」について主に最新の写真を基に見ていきたいと思います。

これまでの専門誌、ライブ映像で確認できた内容をまとめていますが、一部に個人的推測もありますので誤報もあると思いますがご容赦ください。

当時のレスポール・カスタムの詳細な仕様や歴史については省略していますので、ムック本『ギブソン・レスポール・カスタム・プレイヤーズ・ブック(2017年発行リットーミュージック)』などの書籍やネット上の実機の写真を参照してください。

あらまし

写真左:立東社『ロッキンf 』1998年8月号 P.21
写真中央:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』1999年1月号 P.47
写真右:リットーミュージック『ギター・マガジン』2020年9月号 P.193

「清正」は沖縄出身のハードロック・バンド「紫」のギタリスト、比嘉清正氏から譲り受けた1本で当時「B'z LIVE-GYM '98 "SURVIVE"(以下『SURVIVEツアー』)」の一部公演で使用されていたのが確認されています。

左の写真はSURVIVEツアー時に撮影されたもので、当時はダブルブラック・ボビンのピックアップが搭載されていました。中央の写真も同年に撮影されたものですがフロントピックアップがリバースゼブラに換装されていて、この状態でB'zのシングル「The Wild Wind」のMVや当時のTV出演時に使用されていました。

その後ボディ・トップがめくれてしまったこともあり長年使用されることはありませんでしたがリペアを経て2020年発表の松本さんのソロアルバム『Bluesman』で使用された他、配信ライブ「B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day1~5」ではメイン機の1本として大活躍しました。

松本さんが「すごく独特な音がするんですよ(出典:リットーミュージック『ギター・マガジン』2020年9月号 P.190)」と語っていた通り、配信ライブでもその特徴的なサウンドを多くの楽曲で奏でていて、同時にヴィンテージ・レスポールならではの雰囲気に魅了された方も多いと思います。

ボディ・カラーリング

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.28
写真右上:立東社『ロッキンf 』1998年8月号 P.21

ボディ・トップのピックガード用ビス穴が埋められていることやトグルスイッチと指板間の塗装剥がれが修正されていること(写真右上囲み参照)、バインディング周辺の塗装処理のガタつきが無くなっていること、ボディ全体に多数存在した打痕状の塗装剥がれが修正されていること、そして配信ライブで確認できる質感からリフィニッシュされているようです。

個人的な経験としては塗装の質感だけでなくバインディングとの境目の塗装処理にリペア・カスタマイズを担当された職人さんの特徴が出ているように思います。

ボディ材&ネック材

写真上:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.29
写真下:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.28

ボディ材はトップがメイプルでバックは塗装の段差からマホガニー/薄いメイプル/マホガニーの所謂パンケーキ構造になっているのがわかります。

ネック材は塗装の段差から3ピース構造になっていて塗装が剥がれた部分から覗く色味からマホガニーであることがわかり、この時点で清正は1975年以前の製造であることがわかります。

ブリッジ&テールピース

写真:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』2020年9月号 P.23

ブリッジ (ABR-1)は現行のギブソン純正品に、テールピースは「GOTOH: GE101Z (亜鉛ダイキャスト)」に換装されていて、ブリッジ本体がクロームメッキなのに対してブリッジサドルとオクターブ調整スクリュー及びテールピースはニッケルメッキと統一されていないのが清正の特徴です。

また、ギブソン純正のABR-1は現行品でも時期によって仕様が少しずつ違っていて、清正にはサドルの頂点が比較的平らでブリッジ本体高さ調整用のサムナットはギザギザが細かいものが採用されています。

ちなみに松本さん使用機のブリッジは基本的に「ワイヤーありのABR-1」が搭載されていて、弦が切れた場合でもサドルが紛失しないようにとの配慮ではないかと推察されます(一部例外あり)。

ノブ&ポインター

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.28

前述の通り、清正は1975年以前の製造なのでノブはオリジナルのソンブレロ・タイプから所謂リフレクター・ノブ (アフターパーツ市場での呼称)に交換されています。またポインターも1990年代の時点で取り外されていて、当時の好みが反映されています。

ちなみにポインターを外すきっかけは現在も主にステージでのメイン機として活躍している1991年製ゴールド・トップ #1-5283 のポインターの先端が鋭利でうっかり指をひっかけるとケガをするため当時リペア・カスタマイズを担当していた職人さんから提案されたことによるもので、この仕様は初期のシグネイチャーモデルにも引き継がれました(近年はシグネイチャーモデルもポインターあり)。

ピックアップ&エスカッション

写真:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』2020年9月号 P.23

写真:2003年発行リットーミュージック『ギター・マガジン ピックアップ・ブック』P.37

ピックアップはSURVIVEツアー時点では"Lindy Fralin: 59 STD HUMBUCKERS"とのことで、その後フロントピックアップがリバースゼブラのものに換装されていて、上の写真からわかるようにスクエアウィンドウなしの艶ありボビンに外周の黒いアセテートテープが片側のみに巻かれているなどの特徴から該当するのは初期型のリンディ・フレーリンのみとなります。

フロントは換装にあたって「ブーミーだったのでミッド・ローを削るモディファイを施している(出典:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.77)」とのことですが、ダブルブラック・ボビンの時と同じ品番なのかは不明です。 

写真:シンコーミュージック『YOUNG GUITAR』2020年9月号 P.23

すこし見づらいですが、エスカッションはオリジナルのショートタイプからトールタイプに交換されています。シグネイチャーモデルでも長きにわたってショートタイプが採用されていましたが近年はトールタイプですよね。この辺は嗜好の変化というよりピッキングスタイルの変化が影響しているのではないかと思います。

トグルナット&プレート

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.29

プレートはオリジナルと推察されます。

トグルナットは現在はくすんだ金メッキのものが使われていますが、1990年代は色味からニッケルもしくはクロームと推察されますので現在使われているものがオリジナルなのかは判別できないのが現状です。

フレット

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.29

フレットは1990年代に既に背の高い幅広のタイプにリフレットされています。松本さんはこのタイプのフレットが好みのようで、リフレットされている多くの個体が同様のフレットです(あくまでも傾向であり、細めのタイプにリフレットされている個体もあります)。

余談ですが所謂バインディングの黄ばみは一般的にクリアラッカー層の変色に起因するもので、ボディのバインディングと比較して指板のバインディング上面が真っ白なのは塗装されていないためです。

ペグ

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.28

ペグは所謂ミルクボトル・スタイルでペグボタン先端からビスが見えないなど外観上の特徴からヴィンテージの「GROVER: 102 (クロームメッキ)」に交換されていると推察されます。

また、ヘッド裏のペグ取付用ビス穴を確認すると埋めた形跡がないことからオリジナルもグローバー製のようで、清正の製造年推定の材料になります。

トラスロッドカバー

写真:プレイヤー・コーポレーション『Player』2020年9月号 P.28

1990年代はオリジナルと思われる黒白黒の3プライに"Les Paul CUSTOM"の文字入りのタイプが装着されていて(後程の製造年推定で別途検証します)、2020年の再登場時にはプレーンなタイプに換装され、配信ライブ時には「清正」の文字が入れられていました。

写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.76

清正は何年製なのか?

※各年において一律同じ仕様で製造されているわけではなく過渡期の仕様やイレギュラーな個体が多数存在すること、清正のシリアルナンバーは消えてしまっていて不明なことから現在公表されている写真から確実に製造年を突き止めることは極めて困難である事をご了承ください。

ちなみに1990年代の専門誌2誌では「スタッフの話では、76年製だろうとのこと(出典:立東社『ロッキンf 』1998年8月号 P.20)」「72~73年製ということだ(出典:宝島社『BANDやろうぜ』1998年8月号 P.29)」のようにどちらも関係者に取材したと思われる記述ながら年代の不一致が見られます。

各年代の写真やスペック変遷表はムック本を参照していただき、まず以下の特徴から清正は1974~1975年製と考えられます。

  • ボディ・バック材が所謂パンケーキ構造
  • ネック材が3ピースのマホガニー
  • ペグ取り付け穴数と位置から"GROVER '102' "がオリジナル
  • ネックジョイントのヒール形状が比較的小ぶりのかまぼこ型

また、1974年製と1975年製のマホガニーネック期はほぼ共通する使用ながら比較的よく違いが見られるのがトラスロッドカバーです。

写真左:2017年発行リットーミュージック『ギブソン・レスポール・カスタム・プレイヤーズ・ブック』P.47
写真中央:2017年発行リットーミュージック『ギブソン・レスポール・カスタム・プレイヤーズ・ブック』P.51
写真右:立東社『ロッキンf 』1998年8月号 P.21

上の写真は左が1974年製で中央が1975年製、そして右がSURVIVEツアー時の清正です。トラスロッドカバーを比較すると清正と1975年製は白いレイヤーが厚いため太く見えるのが特徴で1975年頃からよく見られるようになり以降はこのタイプのトラスロッドカバーとなります。

(※ただし、1974年製とされる個体でも白いレイヤーが太く見えるタイプが装着されている場合も見受けられること、1990年代の清正に装着されていたトラスロッドカバーがオリジナルであるという前提条件になることをご了承ください)

以上の内容から個人的には「清正の製造年は1974~1975年で、1975年製によく見られる特徴を有していると予想していますが真相はいかに…

おわりに

今回は「清正」について主に最新の写真を基にまとめました。松本さんが譲り受けた1990年代はまだ中古品の範疇だった(当時は10万円台の個体も多数ありました)1970年代のレスポールも今やヴィンテージらしい風格を備えるようになり、また一般的に語られるように特徴的なサウンドを持っていることが配信ライブでも確認でき、興味を持たれた方もいらっしゃると思います。

幸いこの頃のヴィンテージ・レスポールは物によっては新品のカスタムショップ製リイシューとほぼ同価格で購入可能ですので初めてのヴィンテージ・ギターとして検討してみるのもアリだと個人的には思います。

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