前回の記事では松本さんが近年多用している1969年リイシューの青いストラトキャスター #R62497(以下「#R62497」)の詳細を都内楽器店オーダーの同仕様品をもとに簡潔ではありますが紹介しました。

記事公開時点では語れなかったのですが、実は別の大手楽器店からも同仕様でオーダーされていて、先日の入荷にあたり本個体を予約されていたオーナーのうっちーさんから実機確認の依頼があり(うっちーさんは遠方在住のため)、ご厚意で試奏までさせていただきました。
※筆者撮影
my new gear
「fender custom shop 69 STRAT RELIC ASH RW-LPB」
友人の助けもあり無事成約することができました。松本さん本機と同じ仕様の個体を手に入れることができて本当良かったです^ ^#fender #fendercustomshop #fender1969 #fenderstrat pic.twitter.com/MUS07FCX3C
— うっちー (@u78586154) December 5, 2021
その際にうっちーさんから是非当ブログで取り上げて欲しいとのメッセージをいただいていましたので、今回は実機の写真を交えながら松本さん所有の#R62497にも触れていきたいと思います。
なお本記事公開にあたり、うっちーさんおよびオーダーされていた大手楽器店のご担当者様には写真掲載の許可をいただいております。
※通常は筆者所有機以外は取り上げていませんので、今回の記事は例外であることをご了承ください。
目次
オール・ラッカー塗装のアッシュ・ボディは圧巻!
※筆者撮影
オリジナルの1969年製ストラトはアルダー・ボディにポリ塗装の下地とその上にラッカー塗装が施された所謂「トップ・ラッカー塗装」ですが、#R62497および本機はボディ材にアッシュが採用されていて下地も含めてラッカー塗装が施された「オール・ラッカー塗装」です。
またレリック仕様ということもあり塗装自体が薄いためボディ全体にアッシュ材の導管が浮き出た圧巻の外観が印象的で、このオーダー品の最大の特徴と言っても過言ではないと思います(ボディ裏側を含めた控えめなレリック処理も#R62497を彷彿とさせて良い仕事しています!)。
余談ですが、導管の見え方は照明の当たり具合や撮影する角度によって様々に変化するため、カタログや専門誌のように真正面から撮影するとほとんど導管が見えなくなります(そのため私自身も#R62497がアッシュ・ボディとは全く気付いていませんでした)。
※筆者撮影
ちなみに『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』(以下「ギターブック」)の電子書籍版で#R62497を拡大するとわずかながらアッシュ材の導管を確認することができます。
写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.102
ネック形状・指板・フレット
※筆者撮影
オリジナルの1969年製ストラトを踏襲したラージヘッドに近年のカスタムショップ製品では比較的珍しい7.25インチ・アールのラウンド指板で、指板材には目の詰まった黒いローズウッドが採用されています(今回の撮影は暖色系照明下で行っているため実機と比較してかなり明るめの材に写っています)。
ネック形状
画像:2021年発行 FENDER『2021 CUSTOM GUITAR DESIGN GUIDE』P.36
カスタムショップ製品に採用されている「1969 "U"シェイプ(上記画像赤枠囲み)」で、やや厚みのあるローポジションに対してハイポジションはやや薄いと感じられるのが特徴です。
またレリック仕様なので塗装が薄く艶消し状態になっていて握り心地がサラサラしていてフィンガリングのしやすさが印象的でした(私自身はN.O.S.仕様のストラトを所有していて、どちらかというとレリック仕様は敬遠気味なのですがその気持ちが揺らぐくらいの好感触なネックでした)。
参考までに上記画像右側はストラト・ファンに人気のある1960年製リイシューに採用されているネック形状ですが、こちらは薄めのローポジションにやや厚みのあるハイポジションとなっています。
フレット
画像:2021年発行 FENDER『2021 CUSTOM GUITAR DESIGN GUIDE』P.40
現行のカスタムショップ製品向けラインナップでは最も幅が狭く背の低いフレットですが(上記画像赤枠囲み)、カタログに記載されているようにオリジナル(ヴィンテージ)よりもやや大きめのサイズ感となっているためチョーキングやビブラートもしやすく、松本さんが「とにかく弾きやすくて(出典:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.102)」と語るのも納得できました。
参考までに上記画像右側はカスタムショップ製品では定番の「ナロー・トール」で、リフレット時にも人気のある"Jim Dunlop: #6105"や"Jescar: #55095"と同等のサイズ感が特徴です。
ピックアップ
※筆者撮影
ホセフィーナ・カンポス氏によって手巻きされた"Josefina Hand-Wound '69 Stratocaster"が搭載されていて、#R62497からの唯一の仕様変更点です(#R62497のピックアップについてはオーダーされた楽器店からは公表されていないため明言は避けますがカスタムショップ製品の歴史を遡ると答えは見えてくると思います)。
ちなみにホセフィーナ・カンポス氏はフェンダー社のピックアップ製作技術の正統な継承者ですので、#R62497に搭載されているピックアップと同じと言って良いとのことでした。
ノブひとつに至るまで#R62497を完全再現!
※筆者撮影
その他、ノブひとつに至るまで#R62497の仕様を完全再現していて特別オーダー品ならではの一本として仕上がっています。例えば上の写真の場合ではノブやピックアップカバーのカラーリング(ホワイト、パーチメントなど)がパーツごとに細かく使い分けられている点も全く同じ仕様になっています。
※筆者撮影
またネックの木取りや木目なども#R62497に極力近いものが採用されていて、特にネック裏から見た時の雰囲気がよく似ている印象でした(見事に写真を撮り忘れてしまいました…)。
サウンドも印象的!
うっちーさんのご厚意で試奏させていただいたのですが、私の所有するアルダー・ボディのオーソドックスなストラトと比較すると歯切れの良い締まったサウンドが印象的で、ハムバッカー系のギターと比較してストラトの経験がかなり少ない私でも生音の時点で違いを感じられるほどでした。
また当初抱いていたイメージと違ってチョーキングやビブラートもしやすく、とても弾きやすい一本でしたので正直なところ自分でも欲しいと思ってしまいました(笑)
サウンドは前回の記事内でも紹介した都内楽器店の公式YouTubeチャンネルで公開されていますのでこちらを参照いただきたいと思います(こちらの個体は2021年12月12日現在在庫していますので興味を持たれた方は問い合わせをおススメします)。
最後に主な仕様を載せておきます。
- ボディ材:アッシュ2ピース
- ボディカラー:レイク・プラシッド・ブルー
- ネック材:メイプル
- ネック形状:1969 Uシェイプ (1フレット:21.59mm → 12フレット:23.11mm)
- 指板材:ローズウッド
- 指板形状、フレット数:7.25インチ・アール、21フレット
- フレット:ヴィンテージタイプ 45085
- ピックアップ:Josefina Hand-Wound '69 Stratocaster
- 塗装:オール・ラッカー (レリック処理)