今回はヤマハ・オリジナルのロック式トレモロユニット「ロッキンマジックプロ2と3」(以下「RM-PRO2, 3」)の違いを簡潔にではありますがまとめています。
※今回比較に使用した"RM-PRO3"は長めの弦固定スクリューで統一されていましたのでカタログに掲載されているスクリューの長さが弦によって変えてあるタイプとは違いがある可能性があることをご了承ください。
目次
全形写真
弦固定スクリューの長さ・形状やサドル幅に違いがある他、"RM-PRO2"の方がやや艶のある黒メッキです。
※弦によってスクリューの長さが変えてあるタイプの場合はもう少し全長が短くなります(下の写真参照)。
写真:2021年発行 リットーミュージック『TAK MATSUMOTO GUITAR BOOK』P.115
ベースプレート
ベースプレートの形状はほぼ同じですが弦固定スクリュー用のスリット幅が違うため互換性がありません(黄色囲み部分)。
サドル
サドルの形状はほぼ同じですが材質に違いがあるためサウンドも違いが生じます。
ちなみにフロイドローズ・オリジナルのサドルはスチール製です。
また、幅にも違いがあり"RM-PRO3"の方がやや狭いため隣り合うサドルとの間に隙間ができます(互換性はあります)。
サスティーンブロック
サスティーンブロックも材質に違いがあるためサウンドも違いが生じます。
また、ブロック本体の高さにも違いがありますが"RM-PRO2"で低いもの、"RM-PRO3"で高いものも存在します(個人的に低いブロックが使われている"RM-PRO2"、高いブロックが使われている"RM-PRO3"も所有しています)。
恐らくバックプレートに落とし込みがあるモデルには低いブロックが採用されていて、弦高調整時にバックプレートとの干渉を避ける目的だと推察されます(ただし、MG-M Customのようにボディ厚のあるモデルはバックプレートが落とし込まれていても高いブロックが採用されています)。
ちなみにフロイドローズ・オリジナルのサスティーンブロックはブラス製です。
余談ですがB'zファンにも人気の"MUSIC MAN: EVH"のサスティーンブロックはミュージックマン社の要望で販売開始当初はスチール製が採用されていましたが「音が硬くなってしまったので、ブラス製に変更されることになった(出典:2012年発行 シンコーミュージック『ザ・ギターマン 特集●EVHギターズ[増補改訂版]』P.134)」経緯があります。
弦固定スクリュー
弦固定スクリューは"RM-PRO2"の方が短いためユニット本体のキャビティ加工も全長が短いようです。
また、対応する六角レンチにも違いがあり、"RM-PRO2"が2.5mm径で"RM-PRO3"は3mm径です。ちなみに"RM-PRO3"はスタッドも3mm径なのでロックナットも含めて3mm径の六角レンチ1本で弦交換・弦高調整できるように配慮されているようです("RM-PRO2"用のスタッドは2.5mm径でロックナットは時期によって4mm径または3mm径)。
トルクキャップ
トルクキャップは"RM-PRO3"の方がつまみ部分が広めに作られていて、機能自体は同じですがトルク調整のしやすさが改善しています。
アームバー
アームバーは形状に違いがあり、"RM-PRO3"の方が大きめに角度が付けられているのでアームダウンの可動幅がより稼げるようになっています。また"RM-PRO3"の方がやや長め作られているようです。
ちなみに松本さん本人仕様で"RM-PRO3"が搭載されている個体はアームバーがフロイドローズ・オリジナルに換装されています。詳細は下記記事を参照してください

番外編:サドルとサスティーンブロックの材質とサウンドの傾向
サドルとサスティーンブロックの材質は上述の通りで、フロイドローズ・オリジナルと比較すると"RM-PRO2"と"RM-PRO3"の独自性がよくわかると思います。
ヤマハとしては"RM-PRO3"を上位モデルと位置付けているようで、代表機種の「PACIFICA 912シリーズ」は当初"RM-PRO2"が搭載されていましたが、後に"RM-PRO3"に仕様変更されて販売されていました。
ちなみに"RM-PRO3"は「パシフィカを構成するパーツがもつレゾナンスとのマッチングまでも考慮して開発された(出典:1993年発行 ヤマハ『パシフィカ・カタログ』P.1)」とのことです。
個人的な経験では"RM-PRO2"と"RM-PRO3"は優劣ではなく狙っているサウンドの方向性で選択した方が良い結果が得られると感じています。大まかには"RM-PRO3"の方がやや硬めで高域寄りのサウンドにシフトする印象です。
また"MG-MIII Custom"紹介時の専門誌では「IIがソリッドブラスだったのに対して、IIIはスチールになり、音の立ち上がりが良くなり、音質もよりソリッドになった(出典:シンコーミュージック『GiGS』1993年11月号 P.165)」と記載されていました。
おわりに
今回は"RM-PRO2"と"RM-PRO3"の違いを簡潔にではありますがまとめました。この2つを比較した資料がほぼ見当たらないので備忘録を兼ねてまとめましたが、材質ひとつ取り上げてもヤマハの独自性がよくわかると思います。
また、いずれのモデルも既に生産完了していることに加えて年々状態の良いものが入手困難になっていますので、やむを得ず他社製品に交換する際の参考にでもなれば幸いです。